今回は僕のイチオシの再生する生物を紹介します!
あなたは『再生』と聞いて、どのような現象を思い浮かべますか?
多くの方は『鬼滅の刃』に登場する鬼のように手足などの一部分が元に戻るのを思い浮かべたのではないでしょうか。
鬼より遥かに時間はかかりますが、現実にも『イモリ』など手足などを再生できる生物は存在します。
手足を再生できるなんて羨ましい!
でも、もっと凄い再生力をもつ生物がいるっす!
イモリのような再生では、本体は元に戻っても切り離された部分は役目を終えます。
しかし、この世界には切り離された部分からも全身を再生し個体数を増やす生物が存在するのです。
そんな最強の再生力をもつ生物こそが『プラナリア』。
プラナリアの再生力は凄まじく「2つに切れば2匹、3つに切れば3匹…」と断片の数だけ再生する可能性があります。
最強の再生力をもつ『プラナリア』!
数百の断片にしても全て再生したという逸話があるっす!
その驚異的な再生力は多くの研究者に注目され、プラナリアは再生研究のモデル生物になっています。
筆者も大学時代に興味をもち、プラナリアの研究をするサークルに入っていました。
同級生が青春を謳歌している中で、「リア充爆発しろ」と思いながらプラナリアを切っていたのは良い思い出。
本記事はそんな筆者の哀れな青春の思い出であるプラナリアについての記事です。
久しぶりにプラナリアを捕まえたっす!
顕微鏡で観察すると寄り目が可愛らしいっすねー
お褒めいただき光栄です。
プラナリアがしゃべった!?
私は『プラナリ』。
プラナリアの神です。
神!?
あなたがプラナリアを扱うに相応しい人物かを判断しに参りました。
そのためにもいくつか試練を受けていただきます。
し、試練っすか(汗)
超急展開っすけど、頑張ります!
プラナリアの神からの試練により、本記事では書籍や論文の内容を元にプラナリアについてまとめます。
ただし、前提として本記事で扱うのは基本的に『ナミウズムシ』というプラナリアの一種になります。
本来『扁形動物門有棒状体綱三岐腸目』に属する生物の総称がプラナリアであり、陸棲・淡水棲・海水棲それぞれで様々な種類が存在します。
一般的にプラナリアと呼ばれるのは淡水棲であり、その中で最も知名度が高い種がナミウズムシ。
明記がない場合、プラナリアとして紹介される9割以上がナミウズムシと言っても過言ではありません。
そのため、当ブログでも特に明記がなければ「プラナリア=ナミウズムシ」として扱いますので、ご了承ください。
プラナリアは総称であり、実は多くの種類がいるのです。
この記事では「プラナリア=ナミウズムシ」として扱うっす!
前振りが長くなってしまいましたが、本記事は以下のような方にオススメです。
- 『プラナリア』に興味がある
- 『再生』について学びたい
上記に当てはまらない方も生物に興味があれば楽しめる内容ですので、最後までお読みいただけますと幸いです。
特徴的な部位
プラナリアには特徴的な部位がいくつか存在しています。
特に興味をもたれるのが特徴的な部位である『眼点』・『耳葉』・『咽頭』。
本章では、これらの特徴的な部位をプラナリアの性質と併せて説明します。
第一の試練は「プラナリアの特徴的な部位の説明」です。
これは自信あるっす!
プラナリアの特徴的な部位は『眼点』・『耳葉』・『咽頭』っすね!
その様子だと問題なさそうですね。
では、第一の試練開始です。
光を感知する『眼点』
プラナリアは光を極端に嫌い、野生では川の石の裏など影のある場所にいることがほとんどです。
実際に光を当てられると光を避けるように動き回ります。
このような性質を『負の光走性』と呼び、プラナリアはその性質をもつ代表的な生物です。
プラナリアは光を避ける『負の光走性』という性質をもちます!
だから、自然界では川の石の裏に隠れてることが多いっす!
一般的なプラナリアは光が苦手ですが、私のように試練を乗り越えれば克服できます。
確かにプラナリアに光を当て続ければ反応しなくなるっす!
僕は無意識に試練を与えてたのか…!
ノウキン、あなた意外と畜生ですね。
光が大嫌いなプラナリアですが、光を感知しているのは特徴的な寄り目。
目と聞くと物や景色が見えると思うかもしれませんが、プラナリアの目はそんな高性能ではありません。
プラナリアの目は光を感知できますが、ヒトのように色や形などの複雑な視覚情報を得ることはできないのです。
つまり、あの可愛らしい寄り目は光を感知するだけの部位。
このように光を感知するだけの単純な視覚器官は『眼点』と呼ばれます。
プラナリアは『眼点』で光を感知してます!
実際、眼点の無いプラナリアに光を当てても全然反応しないっす!
プラナリアは熱や乾燥に弱いので、自然界では太陽光を避けるために眼点が必要なのです。
太陽光を避ける…なんだか『鬼滅の刃』の鬼みたいっすね(笑)
共通点はありますが、プラナリアは人間を襲いませんよ。
ただし、私が本気を出せば人類は滅びますが。
サラッと恐ろしいこと言ってる(汗)
2018年の『Communications Biology』誌に掲載された論文では、プラナリアの眼点の新たな事実が判明しています。
その新たな事実とは、プラナリアが左右の眼点で感知した光の強弱がある一定(閾値)以上になると、その差がなくなるように方向転換するというもの。
逆に、左右の眼点で感知した光の強さの差が閾値未満の場合は直進します。
この仕組みは細かい光の強弱を認識せず神経細胞への負担が少ないと考えられており、プラナリアは結果的に省エネな行動をしているというのだから驚きです。
以下URLから全文読めますので、詳しい内容が気になる方はご一読ください。
https://www.nature.com/articles/s42003-018-0151-2
最近の論文によると、プラナリアは左右の眼点で感知する光の強さが一定未満になるように行動するそうです!
細かい光の強弱を気にしないので、とても省エネな行動なんですよ。
要するに、頭を使わないようにしてるってことっすね!
なんだか馬鹿にされた気がしますが、論文を読む勉強熱心さに免じて許すとしましょう。
エサを探すレーダー『耳葉』
可愛らしい見た目(?)をしていますが、実はプラナリアは肉食の生物。
自然界ではカゲロウの幼虫など生きた生物だけでなく、魚などの死骸を食べる分解者の役割も担っていると考えられています。
ちなみに、ペットとして飼う場合は鶏レバーに一番よく食いつきます。
プラナリアは肉食の生物っす!
飼ってるプラナリアにはスーパーで買ったレバーをあげてます!
私もレバー大好きです!
急に反応良くなった!
神様でも食欲には勝てないんっすね(汗)
プラナリアにエサである鶏レバーを与えると数分程度で集まってきます。
しかし、眼点は光を感知するだけなので、プラナリアは視覚を頼りにエサに近づけません。
視覚を頼れないプラナリアがエサを探すのに活躍するのが頭部の左右に突出した『耳葉』という部位。
「耳」という字がつきますが、決して聴覚が優れているわけではありません。
耳葉の主な機能は化学物質を感知することであり、エサを探すレーダーとしての働きをします。
特に『グリコーゲン』という物質に強く反応するようで、それを多く含む鶏レバーにプラナリアが集まりやすいと考えられています。
『耳葉』は化学物質を感知する部位!
エサを探すレーダーとして働くっす!
「耳」という字がつきますが、人間の部位の中では「鼻」の方が近いですね。
言われてみれば確かに!
ややこしい名前を付けられたもんっすね(汗)
耳葉が特徴的なプラナリアに『アメリカツノウズムシ』という種類がいます。
名前にある「ツノ」は特徴的な耳葉が角に見えることが由来と考えられています。
耳葉の形が明確なアメリカツノウズムシは耳葉の実験にうってつけ。
アメリカツノウズムシの耳葉を切断して離れた位置にあるレバーを捕食できる割合を調べた近年の論文がありました。
論文によると、耳葉切断1日後のアメリカツノウズムシは約10%しかレバーを捕食できませんでした(耳葉のある個体は約100%)が、耳葉切断2日後になると約90%の個体がレバーを捕食できているという結果でした。
つまり、失われた耳葉の機能は2日で回復したということです。
耳葉の形状が再生されるのには5〜6日かかるので、耳葉の機能だけが優先的に再生されていることになります。
参考文献は2021年の『Frontiers in Cell and Developmental Biology』誌に掲載された論文で、Figure 3の実験が該当します。
以下URLから全文読めますので、図を確認したい方はこちらをご確認ください。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcell.2021.777951/full
耳葉は形状を再生するには約5日かかりますが、機能はたった2日で戻るそうです!
エサを探せないのは致命的ですからね。
耳葉の機能は優先して回復します。
食べ物を探せないなんて想像しただけで恐ろしいっす…
耳葉の機能だけでも優先して直すのも納得(汗)
話していたらお腹が空いて、レバーが恋しくなってきました。
相当レバーが好きなんっすね(汗)
自律した内臓『咽頭』
当然ですが、エサを見つけられても口が無ければ食べられません。
プラナリアに口は無いように見えますが、実は体の中心にある『咽頭』という部位が該当します。
プラナリアは管のような咽頭を体外に突出させてエサを取り込みます(摂食行動)。
口に該当すると書きましたが、咽頭は普段体内にあり内臓でもある部位。
冷静に考えると、プラナリアは内臓を出して食事をするというグロテスクな摂食行動をとっているのです。
『咽頭』は口に該当する部位っす!
体外に出てきた咽頭はまるでストローみたいですよ!
普段は体内にしまっているので、内臓とも言えます。
人間で例えるなら、胃で直接食事をする感じですね。
そう考えると結構グロいっすね…
ちなみに、プラナリアに肛門はありません。
未消化物は咽頭から排出するので、これを人間で例えると…
プラナリ様、それ以上はアカンっすよ!!
そんな咽頭ですが、2021年の『Science Advance』誌に掲載された論文で衝撃的な事実が判明しています。
なんと咽頭だけで摂食行動をとることが可能なのです。
論文で行われた実験では、切り出された咽頭が単独で付近のレバーを感知して摂食行動をとっています。
しかも、レバーにウコンを混ぜると摂食行動をとらない判断(摂食拒否)をしたというのだから驚きです。
後述しますが、プラナリアの頭部には神経系、いわゆる脳が存在します。
咽頭は脳と神経で繋がっているため、近年までは脳が咽頭に指示を出していると考えられていました。
しかし、咽頭のみで摂食行動をとったことから、咽頭に独立した神経系があることが判明。
さらに、摂食拒否をしたことから、摂食行動に関しては咽頭が脳に指示を出している可能性も示唆されました。
上記を踏まえると、咽頭はプラナリアにとって第二の脳と言える部位なのかもしれません。
参考文献は以下URLから全文読めますので、詳しい内容が気になる方はご一読ください。
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aaz0882
最近の論文でプラナリアの咽頭には独立した神経系があることが判明しましたけど、これはちょっと怖いっすね(汗)
そうでしょうか?
自動で食事をしてくれるので、便利ですよ。
それが怖いんっすよ!汗
それにしても良く勉強していますね。
第一の試練はこれにて終了です。
これでプラナリアを扱うに相応しいと認めてもらえるんっすか?
まだ認められませんね。
第二の試練に行きましょう。
ですよねー(泣)
脳と内臓をもつ原始的な生物
体長が数cm程度しかないプラナリアですが、意外にも『脳』と『内臓』が存在します。
どちらも単純な構造であることから、プラナリアは脳と内臓をもつ最も原始的な生物の1つとして注目されています。
本章では、そんなプラナリアの原始的な脳と内臓について説明します。
第二の試練は「プラナリアの脳と内臓についての説明」です。
あんな小さな体に脳や内臓があるの凄いっすよねー
自分なりに説明してみるっす!
期待していますよ。
では、第二の試練開始です。
全身に栄養を届ける『腸管』
プラナリアには心臓や血管などの循環器系がなく、主な内臓は『腸管』です。
腸管はプラナリアの全身に広がっており、咽頭から得たエサの栄養を送っているのです。
腸管がどのように全身に広がっているかのヒントは、冒頭でお伝えしたプラナリアの分類にあります。
99%の読者が忘れていると思うので、もう一度お伝えします。
『扁形動物門有棒状体綱三岐腸目』です。
呪文のようなに長いですが、今回注目してほしいのは『三岐腸目』の部分。
「三つに分岐する腸」という意味であり、実際プラナリアの腸管は咽頭の手前で3つに分かれています。
太い腸管が頭部側に1つ・尾部側に2つに分かれ、そこからさらに小枝のように細い腸管が分岐しています。
ちなみに、プラナリアにアカムシを食べさせると腸管が赤く染まり、ほぼ全身に腸管が広がっていることがわかります。
プラナリアには心臓や血管がないっす!
その代わり全身に広がっている『腸管』から栄養が運ばれてます!
プラナリアの腸管は咽頭付近で3つに分岐しています。
それがさらに細かく分岐することで全身に栄養を送れるのです。
腸が三つに分かれているから、『三岐腸目』に分類されるんっすね!
『かご状神経系』と『nou-darake 遺伝子』
プラナリアの脳はイメージ通り、頭部に存在します。
神経は脳から尾部側に一対伸びていき、それが横連神経で繋がっています。
このような神経系は『かご状神経系』と呼ばれ、プラナリアはその典型的な例です。
プラナリアは脳から尾部側に神経が2本伸びて、それが横に伸びた神経で繋がった『かご状神経系』という神経系の典型的な生物っす!
単純な神経系ですが、これで脳から全身に指示を出せるのです。
脳といえば『nou-darake 遺伝子』は知っていますか?
もちろんっすよ!
これを説明して、第二の試練を突破するっす!
プラナリアの脳の形成を制御する遺伝子として有名な『nou-darake 遺伝子』(以降、『ndk 遺伝子』)。
2002年に研究者なら誰もが憧れる『nature』誌に掲載された論文では、ndk 遺伝子をノックダウン(発現抑制)したプラナリアが全身脳だらけになるというその名に相応しい研究結果が報告されています。
https://www.nature.com/articles/nature01042
この論文に関わった理化学研究所の資料によると、以下のような流れが予想されています。
まず、脳を形成するためには頭部で発現される脳形成因子(仮に『X』とする)が『FGF受容体』に結合する必要があります。
FGF受容体はプラナリアの全身に存在するため、Xが移動してしまえば全身脳だらけに。
しかし、ndk 遺伝子から発現する『Nou-darakeタンパク質』(以降、『NDK』)がXと結合して頭部に留めることでXは頭部のFGF受容体とのみ結合し、頭部にのみ脳が形成される。
上記を踏まえると、「ndk 遺伝子を抑制する」=「Xが全身のFGF受容体と結合する」ということなので、ndk 遺伝子をノックダウンしたプラナリアは全身脳だらけになるという結果に繋がるのです。
ndk 遺伝子は脳形成因子を頭部に留める役割があると考えられてます!
この役割が抑制されると全身脳だらけになってしまうっす(汗)
私はあえてndk遺伝子からのNDKの発現量を減らしてハイスペックな脳を複数用意しています。
タンパク質の発現量を調節できるなんて…
流石はプラナリアの神様っす!
ようやく神の力を理解し始めたようですね。
それに免じて、第二の試練はこれで終了です。
脳が複数あるのが鬼舞辻無惨っぽいって思ったのは黙っとこ(汗)
驚異的な再生力の秘密
冒頭でも説明したように、プラナリアはバラバラに切断されても断片の数だけ個体数を増やす可能性がある驚異的な再生力をもちます。
本章では、そんな驚異的な再生力の秘密について説明します。
第三の試練は「プラナリアの再生についての説明」です。
これが最後の試練になります。
いよいよ最後の試練…
プラナリアと言えば再生力ですし、最後の試練に相応しいっすね!
あなたがプラナリアを扱うに相応しいか見定めさせてもらいます。
では、第三の試練開始です。
イモリの『付加再生』
プラナリアの再生について説明する前に『イモリ』の再生について説明します。
イモリも再生研究のモデル生物であり、手足を再生できる程高い再生力をもつ生物。
イモリの手足が切断された場合、切断面に『再生芽』が形成されます。
イモリの再生芽は、元々筋肉や骨の細胞だった傷口周辺の細胞が『脱分化』して集まった状態。
つまり、筋肉や骨になる一歩手前の状態の細胞が集まっています。
脱分化した細胞が時間を経て再び筋肉や骨の細胞に『分化』することで元通りの形の手足へと再生していきます。
イモリのような再生は『付加再生』と呼ばれており、高い再生力をもつ生物の多くがこの再生方法に該当します。
イモリの再生は、切断面周辺の細胞が脱分化して不足した細胞へ再び分化する『付加再生』っす!
我々プラナリアには及びませんが、イモリも素晴らしい再生力をもっているのですね。
プラナリアと比較するためにイモリの再生について紹介しました!
プラナリアの再生が特殊なことを示すためには、比較対象が必要ですからね。
イモリをカマセに使ったみたいに言わないでください(汗)
全身に存在する『全能性幹細胞』
イモリと同様にプラナリアも切断面に再生芽を形成します。
しかし、イモリとは異なり、プラナリアの再生芽には『全能性幹細胞』が集まっています。
イモリの再生芽を形成する脱分化した細胞は運命がある程度決まっており、分化できる細胞に限りがあります。
その一方で全能性幹細胞は運命が決まっておらず、あらゆる細胞に分化することが可能。
一般的に生物は成長する過程で全能性幹細胞を失っていきます。
ヒトも受精卵の時に全能性幹細胞が存在しますが、成長と共に決まった細胞へ分化し、基本的に戻ることはありません。
しかし、プラナリアは成体でも全能性幹細胞が全身の約10〜20%存在するのです。
研究者が膨大な時間とお金をかけて作ったiPS細胞をプラナリアは自前でもっていると言えば、凄さが伝わると思います。
プラナリアは全身に『全能性幹細胞』をもってます!
どんな細胞にも分化できるチート細胞っすね!
それが体内の約10〜20%を占めていますからね。
脳や内臓だって再生可能なのです。
プラナリアの驚異的な再生力は全能性幹細胞おかげってことっすね!
そういえば、脳が再生したプラナリアはどんな気持ちなんだろう?
私は切られたことがないので、分かりません。
切りにきた敵は一撃で倒すスタイルです。
聞く相手を間違えたっす(汗)
位置情報の再振分け『インターカレーション』
プラナリアの体には位置情報があり、再生時はそれに従って頭部と尾部のどちらを再生するかを決定します。
例として、頭部を1・尾部を10として1〜10まで番号を振り分け、番号毎にバラバラの断片に切断します。
そうすると、まず各断片それぞれの切断面で頭部と尾部の方向性が決定。
この運命付けは『ディスタリゼーション』と呼ばれています。
その後、切断前の番号はリセットされ、新たに1〜10の番号が振分けられると考えられています。
このような位置情報の再振分けは『インターカレーション』と呼ばれています。
プラナリアは、インターカレーションにより体を再編しながら再生しているのです。
この仕組みのおかげで環境さえ整えばプラナリアは小さな断片からでも1個体を再生できるのです。
ちなみに、プラナリアを飢餓状態にすると体全体が小さくなるのですが、これもインターカレーションによって体を再編することによるものと考えられています。
プラナリアの体には位置情報があって、切断された時は位置情報をリセットして体を再編しながら再生してるっす!
この体を再編する仕組みがあるので、プラナリアは小さな断片からでも1個体になることができるのです。
最後に、この位置情報を決定する主な因子を紹介するっす!
いよいよ大詰めですね。
プラナリアの体の位置情報を決定する主な因子は『ERK』と『β-カテニン』という2種類のタンパク質。
全能性幹細胞の分化にはERKの活性化が不可欠なため、プラナリアの全身でERKは活性化しています。
しかし、尾部側に移るにつれてERKが活性化している割合は減少していくのです。
その理由は、β-カテニンによるERK活性化の抑制。
つまり、β-カテニンがERKを抑制することで尾部側に頭が再生しないように調整されているのです。
実際、β-カテニンをノックダウンしたプラナリアの再生実験で尾部側から頭部が再生したという報告があります。
位置情報を決定する主な因子は『ERK』と『β-カテニン』!
この2つの活性勾配がプラナリアの位置情報を決めるっす!
自然界ではほぼあり得ませんが、2つの因子の活性勾配が崩れた状態で再生すると両側が頭部や尾部になる奇形個体になってしまいます。
β-カテニンの抑制以外にも宇宙で再生したプラナリアの中で両側頭部になった個体がいたらしいので、無重力だと上手く調節できないのかもしれないっすね。
よくぞここまで調べました。
第三の試練はこれにて終了です。
エピローグ
なんとか…試練を乗り越えたっす…
3つの試練をよくぞ乗り越えました。
ノウキン、あなたをプラナリアを扱うに相応しいと認めましょう。
ありがとう…ございます…
これからも…勉強に励みます…
ずいぶん消耗しているようですが、修行が足りていませんね。
最後に今回参考にした本も紹介しておきなさい。
めっちゃスパルタやん(泣)
今回の主な参考書籍を2冊紹介します。
最初に紹介するのは『切っても切ってもプラナリア』。
著者の阿形 清和氏はプラナリア研究の第一人者であり、現在は『基礎生物学研究所』の所長を務めている研究者。
「そんな凄い研究者が書いてるなら難しい本なんだろう」と思うかもしれませんが、全くそんなことはありません。
イラスト付きで約40ページと基礎的な内容がコンパクトにまとめられており、非常に読みやすい一冊。
2009年発売と少し古くはありますが、プラナリアの初学者にオススメの書籍です。
もう一冊は『切っても死なない無敵の生きもの プラナリアって何だろう? 』。
少し発展的な内容も含まれますが、実際のプラナリアの写真も載っていて好奇心をそそられる一冊。
プラナリアの様々な切り方が書かれており、14頭の個体はの写真は見応えがあります。
今後プラナリアの実験をしてみたいという方にオススメの書籍です。
ちなみに、個人的に複数頭の個体に挑戦中したのですが、双頭までしかできませんでした。
これで今回の私の役割は終わりです。
プラナリアに関する話題があれば、また降臨します。
プラナリ様…
ありがとうございました(バタッ)
倒れてしまいましたか。
今後の成長に期待ですね。
今回の記事はこれで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!