
今日も元気に頑張るぞー
ん?近くに何かいるっすね?



じょうじ…



ゴ、ゴキブリだー(汗)
しかも変な鳴き声出してキモいっす!
あなたは『ゴキブリ』と聞いてどんな印象を思い浮かべますか?
『ツヤツヤした黒い体』でしょうか?はたまた『素早い動き』でしょうか?
恐らく、それらの特徴の印象よりも『気持ち悪い』といった嫌悪的な印象をもっている人がほとんどだと思います。
今回はそんな嫌われ者のゴキブリとそれを愛する『ゴキブリスト』についての記事です。



キモいとは失敬な。



何者っすか!?



僕はゴキブリスト『Gigo』。
こっちは相棒の『ジョージ』だよ。



じょうじ…



これは見つかったら怒られそう(汗)



今回はゴキブリの魅力を伝えに来たのさ。
短い時間ではあるが、よろしく。



よ、よろしくっす…
ゴキブリについて知りたい・これから研究したい人に参考となる記事ですので、最後までお読みいただけますと幸いです。
※本記事にはゴキブリの画像が表示されますので、苦手な方はご注意ください。
ゴキブリの分類



ゴキブリってなんとなく苦手意識があって、なかなか調べようって気分にならないんっすよね(汗)



じょうじ!



ジョージを怒らせたようだね。
まずはゴキブリの基礎を叩き込んであげよう!



ジョージの顔がテラフォーミングしたような気がしたっす(汗)
ゴキブリがどんな生物なのかを知ってもらうために、まずは分類について説明します。
生物は大きいグループから『ドメイン→界→門→網→目→科→属→種』に分類されます。
例えば、家に出てくるゴキブリ代表の『クロゴキブリ』は以下のように分類されます。
真核生物(ドメイン)→動物界→節足動物門→昆虫網→ゴキブリ目→ゴキブリ科→ゴキブリ属→クロゴキブリ(種)
上記のように『昆虫網』に分類されていることから、ゴキブリも歴とした昆虫であることがわかります。



なんとなくわかってはいたけど、ゴキブリも昆虫なんっすねー



決して得体の知れない生物ではないのさ。
ここでゴキブリクイズだ!
以下の中で分類学的にゴキブリに最も近縁な生物はどれでしょう?
①クワガタ
②カマキリ
③セミ



全然わかんないっす…



読者諸君もぜひ考えてみてくれたまえ。



じょうじ…





よし、決めた!
色合いが似ている『①クワガタ』でいくっす!



Final answer?



ファ、ファイナルアンサーっす!



じょうじ!



残念、正解は『②カマキリ』さ。
君の回答にジョージも御立腹だね。



まさかのカマキリ!?
ゴキブリとはかけ離れた姿のカマキリですが、分類学的に重要な共通点がいくつかあります。
1つ目の共通点は、幼虫がサナギにならず脱皮を繰り返して成虫になる(不完全変態)ことです。
ゴキブリもカマキリも5〜20回の脱皮を経て成虫になります。



クワガタは幼虫からサナギを経て成虫になる(完全変態)。
この時点でゴキブリと近縁ではないのさ。



見当違いな回答をしてしまったっす(泣)
しかし、不完全変態の昆虫はゴキブリとカマキリ以外(セミ、バッタなど)にも多くいます。
ゴキブリとカマキリを近縁と判断するのは次の2つ目の共通点になります。
その共通点とは、卵鞘の中に複数(数十〜数百)の卵を産むことです。
それぞれ以下のような卵鞘の中に卵を産むことで厳しい環境や外敵から卵を守っています。







卵鞘に卵を産むのは昆虫でも少数。
これがカマキリがゴキブリと近縁である強い証拠なのさ。



ゴキブリがカマキリの近縁だったなんて、想像もしてなかったっす!



家にゴキブリが来たら「カマキリの親戚が来た」と思えばいいのさ。



カマキリでも家に出るのは嫌っすよ(汗)
元ゴキブリ嫌いのゴキブリスト



今更っすけど、ゴキブリストってなんなんっすか?



よくぞ聞いてくれた…と言いたいが、明確な定義はないのだよ。
強いて言えば、ゴキブリを愛する者かな。



ゴキブリを愛する(汗)
元々素質があるんだろうなー



そんなことはないさ。
元々はゴキブリ嫌いだったゴキブリストだっている。
今回紹介する研究者は、『磐田市竜洋昆虫自然観察公園』の職員である柳澤 静磨氏です。


柳澤氏は専門学校卒業後に磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員となったため、研究機関に所属したことはありません。
また、元々はゴキブリ嫌い(しかもゴキブリアレルギー)であり、「ゴキブリを事務所で飼わないでください」と先輩職員に言ってしまったこともあるそうです。
しかし、職場でゴキブリの世話をするうちにどんどん愛着が湧いて自らも飼育を始め、今では自宅に数万匹のゴキブリを飼育している立派なゴキブリストです。
磐田市竜洋昆虫自然観察公園で『ゴキブリ展』を開催したり、本を出版し日経新聞に取り上げられるなど、2022年現在で最も注目を集めているゴキブリストと言っても過言ではないでしょう。
以下に柳澤氏のTwitterと『磐田市竜洋昆虫自然観察公園』のホームページを載せますので、興味ある方はチェックしてみてください。



数万匹も飼育するなんて、ゴキブリを本当に愛しているんっすね!



ゴキブリストに興味が出てきたようだね。
ここでゴキブリクイズだ!
自宅に野生のゴキブリが現れた場合に柳澤氏はどう対処するでしょう?
①殺虫剤で殺す。
②生捕りにして飼育する。
③標本にする。



とりあえず、①ではないことを祈るっす(汗)



読者諸君もぜひ考えてみてくれたまえ。



じょうじ…





うーん、悩むけど『②生捕りにして飼育する』にするっす!



Final answer?



ファ、ファイナルアンサーっす!



じょうじ!



惜しいな。
正解は『③標本にする』さ。



間違えたけど、①じゃなくてちょっと安心(汗)
柳澤氏は自宅に数万匹のゴキブリを飼っており、飼育しているゴキブリにも影響が出てしまう可能性がある殺虫剤は使用できません。
そのため、自宅で野生のゴキブリが出た場合はプラスチックケースで捕獲後に冷凍庫に入れて殺虫するそうです。
ゴキブリの標本作りは難しく、殺虫したゴキブリで標本を作ることで標本作りに慣れることができます。



自宅に出るクロゴキブリなどで練習することで、珍しい種のゴキブリの標本作りで失敗する確率を減らせるのさ。



なるほど!



家でゴキブリを見つけたらぜひ標本を作ってみてくれたまえ。



け、検討してみるっす…
ゴキブリストを魅了した美しきゴキブリ



ここまでの話でゴキブリに興味は出てきたけど、どうしても苦手意識がなくならないっす(汗)



・・・



ジョージが呆れているようだが、君の気持ちは理解できなくもない。
まだ君は一般的なゴキブリの印象に囚われているということさ。



せっかく色々教えてもらったのに申し訳ないっす…



そんな君のために、最後に一般的なゴキブリの印象を変えるようなゴキブリを紹介しよう!
ゴキブリが嫌われる大きな要因としては、家の中に入ってくることが挙げられます。
しかし、数多くいる種類の中で家に入ってくるゴキブリは圧倒的に少数派です。
日本で家の中に入ってくるゴキブリは基本的に『クロゴキブリ』を始めとした10種程度ですが、ゴキブリは世界で約5000種、日本で約65種が発見されています。
その大半が野外に生息しており日常生活では見る機会はほとんどありませんが、その中には「これ、本当にゴキブリ?」と思わせるような見た目の種もいます。
その代表的な例が『ルリゴキブリ』という種です。





こんな綺麗な見た目のゴキブリがいるんっすね!



ゴキブリの印象が変わるだろう?
柳澤氏もこのルリゴキブリに魅了されて研究まで始めたのさ。
柳澤氏はこのルリゴキブリに魅了され沖縄の離島を探し回り、実際に何匹か採集しました。
採集した中に新種の可能性がある個体がおり、それがきっかけで柳澤氏は新種のルリゴキブリの研究を始めました。
研究経験のない柳澤氏はデータ集めや論文作成にとても苦労したそうですが、法政大学の島野 智之教授や鹿児島大学の坂巻 祥孝准教授などの協力を受けることで様々な困難を乗り越えて論文を発表し、柳澤氏の発見した個体が日本で約35年ぶりとなるゴキブリの新種と認められました。





研究経験がなかったのに新種発見と論文発表をするなんて凄いっす!



同じゴキブリストとして誇らしい限りだよ。
研究の過程は柳澤氏の本に書かれているから読んでみてくれたまえ。
今回の参考文献である以下の書籍に柳澤氏の研究の過程が詳しく書かれていますので、興味がある方はぜひ一読ください。



『ルリゴキブリ』を見てゴキブリへの苦手意識が薄れた気がするっす!
他にもゴキブリのイメージを変えるような種はいるんっすか?



もちろんさ。
ここで最後のゴキブリクイズだ!
以下の生物の中で擬態しているゴキブリ種がいるのはどれでしょう?
①カマキリ
②ハチ
③テントウムシ



最後は当てたいっす!



良い心がけだね。
読者諸君もぜひ考えてみてくれたまえ。



じょうじ…





捕食されにくい生物に擬態するのが合理的な気がするので、毒針をもつ『②ハチ』にするっす!



Final answer?



ファイナルアンサーっす!



じょうじ



正解は『③テントウムシ』さ。
だが、理由は良い線いっているからジョージも怒っていないね。
テントウムシに擬態する『テントウゴキブリ』はフィリピンなど東南アジアに生息するゴキブリです。
擬態する理由は、テントウムシが非常に不味く天敵(鳥など)に狙われにくいからと考えられています。
テントウムシは襲われると苦い液体を出し、食べると非常に不味く、天敵にあまり狙われません。
そのため、テントウムシに擬態したテントウゴキブリも天敵に狙われにくくなります。





本当にテントウムシそっくりっす!



たまたまテントウムシに似たゴキブリが生まれて、天敵に狙われず繁殖したのだろうね。



ゴキブリにもこんなに面白い進化をした種がいるんっすね!
ゴキブリ種をもっと知りたい方には以下の書籍がオススメです。



日本のゴキブリの図鑑ではあるが、採取・飼育・標本作成の方法まで書かれていてゴキブリストには必須の一冊さ。



ちょっと怖いけど、読んでみるっす!
エピローグ



結局、ゴキブリクイズは全部ハズしちゃったっす(泣)



結果はともかく、君がゴキブリに興味をもったことは伝わったよ。
ゴキブリの魅力が伝えられて僕もジョージも嬉しい限りさ。



じょうじ…



これまではなんとなく苦手意識があったけど、今回の話でゴキブリについてもっと勉強したくなったっす!



次会う時は期待しているよ。
未来のゴキブリストに幸あれ。



じょうじ!



Gigoさん・ジョージ、今回はありがとうございました!
今回の記事はこれで終わりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!